人間の体の70%は水で出来ているという話を聞いたことがある。死神や…尸魂界にいる者ならどうなんだろう…霊子が妥当なのかな、それとも同じ水だろうか。きっと技術開発局の人たちならそれに関して詳しいんだろうけどわたしは知らない。でもわたしの場合70%は意外と冬獅郎でできているんじゃないかと思った。
鍋の蓋を開けると湯気が上る。弱火にかけてくつくつと煮ている鍋の中には頑張って作った料理(今回は肉じゃが)が入っている。今回は特別頑張ったのだ。なんと言ってもこれは冬獅郎に食べてもらうから。今日が非番だったから出来たこと。勤務時間が終わる夕飯前のこの時間帯。残業はしたくない冬獅郎ならきっともう自室に戻っている頃だ。あの子は、おばあちゃんっ子だから"寝る子は育つ"というおばあさんの話を信じて睡眠時間を増やしている。天才児と呼ばれるあの子が身長という小さなことに悩んでいるんだと思うと、なんだろう……微笑ましく思う。(冬獅郎に取っては大きな悩みなんだろうけど)

冬獅郎の自室に行くとやはり彼は寝ていた。今日はそんなに疲れていたのか死覇装を着たまま羽織を布団代わりにして寝ている。


「冬獅郎!」
「…なんだ?」


寝ているときも眉間のシワは消えないみたい。いつもシワを寄せてると本当にシワになっちゃうのに。冬獅郎の顔を覗き込みながら名前を呼んだから眠たそうに開いた目が一段と大きくなった。「近いんだけど。」そう言うとまた目を閉じるから髪の毛を思い切り引っ張ってやった。


「今日はわたしが夜ご飯作ってあげるね・って約束した日だよ。」
「ああ…そうだっけか。つか引っ張りすぎ、絶対抜けた。」


いつもツンツンにセットされている冬獅郎の髪は寝ていたからか後ろが潰れてしまっている。冬獅郎が隊長になってから私の中でもこの子は完璧なんだと思わされることが多くなった。けどこういうところを見ればそうじゃないと安心する。…冬獅郎はわたしとは素質から違うから、いつか手の届かないところへ行ってしまいそうで…怖い。今も隊長の位になった冬獅郎が前より遠くに行っちゃった気がして時々不安になる。

やっと眠気が飛んだらしい冬獅郎は体を起こすと羽織も着直して動き出した。わたしはその後をついていく。冬獅郎の歩幅はわたしより小さいから歩いている内に追いつける。隣に並ぶと自然とお互いに歩調を合わせた。


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わたしの部屋に来ると早速、ふたり分の夕飯を装った。今回のは結構自信がある。
一緒に合掌して箸を持つ。


「おいしい?」
「まあまあ。」


さらりと言うと冬獅郎はご飯を口に運んだ。わたしなりに頑張ったけどあっちにしてみたら"まあまあ"らしい。まあまあということはつまり、普通。やっぱり冬獅郎の育ての親であるおばあさんの味が一番おいしいのだろう。


「やっぱりおばあさんの味が一番?」
「まあ、一番しっくりくるな。」


言い終わった後、今度はわたしが今日一番気合いを入れた肉じゃがを食べた。


「けど、のも結構好きな味してる。」
「そりゃ冬獅郎好みになるように頑張ってるからね。」
「…だったらその内大好きな味になるんだろうな。」


大好きな味、将来的な話だけどまさか冬獅郎からそんな言葉が聞けるなんて思っても見なかったから驚いて彼を凝視した。(あ、顔赤い)わたしの視線に気づいたのかいきなり食器を片付けて流しに持って行く。照れたのだろうか。いくら強くなってもどれだけ地位が高くなっても中身はそのまま。これがらも冬獅郎は冬獅郎であってほしいな。

手を取りあう日
「それってずっと傍に居ていいってこと?」
「…ああ。」
こちらは向かずに食器を洗う冬獅郎は小さく返事を返してくれた。

(080918)







悠亜さん、2周年おめでとうございます!
リクエストを受けて下さるとのことで、日番谷隊長でお願いさせて頂きましたv
悠亜さんの書かれるお話は、ほんのり甘くて幸せな気分になれる夢で大好きです。
ヒロインとは、先輩・後輩の関係でお互い自立していて。だけど両想い。この、ほんのり感が良いです。

BLEACH以外にも幅広いジャンルの夢を扱っていらっしゃいますが、是非是非、また日番谷隊長の夢も書いて下さいね!(と、ちゃっかり。)
素敵な夢をありがとうございます!!





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